新品なのに、以前から自分の服だったように馴染む。

RIDGE MOUNTAIN GEARのオリジナルファブリック「Foggy Ombre Check」で目指したのは、そんな生地でした。

色の境目が少し曖昧で、やわらかな陰影がある。袖を通したときには肩の力が抜けるけれど、着た姿には自然なまとまりがある。山へ出かける朝にも、いつもの一日にも、つい手に取りたくなるようなものをつくりたいと思っていました。

思い描いた風合いを、織物にする。

こうして言葉にすると、イメージは浮かびます。けれど、そこから実際に触れられる一枚の生地になるまでには、糸や織り、仕上げについての、たくさんの判断が必要です。

そのものづくりをご一緒してくださったのが、岐阜県羽島市の渡六毛織株式会社さんです。

渡六毛織さんの創業は1890年。始まりは綿の着物地づくりでした。1941年に毛織物の生産を始め、1955年に株式会社を設立。代々受け継がれてきた仕事は、ウール、麻、合成繊維などへと素材の幅を広げ、今日まで続いています。渡六毛織公式・会社紹介130年以上の歴史を持つこの会社が、初代から大切にしていると紹介しているのが、「変わり続けること」という言葉です。
渡六毛織公式・会社紹介

着るものが変われば、生地に求められることも変わります。使う素材も、目指す風合いも、その時代の暮らしとともに変わっていく。渡六毛織さんの歩みを知ると、長く続けるということには、そうした変化を受け止める仕事も含まれているのだと感じます。

思い描いた風合いを、織物にする。

その積み重ねの先で、僕たちがつくりたい生地にも力を貸していただける。小さなブランドにとって、とても心強いことです。

Foggy Ombre Checkの出発点にあったのは、朝もやが山肌をゆっくり包むような、淡い色の重なりでした。

離れて見ると色が静かにまとまり、近づくと、その中にいくつもの濃淡が見えてくる。チェックの線を強く見せるよりも、隣り合う色が少しずつ移り変わっていくような表情を求めました。

思い描いた風合いを、織物にする。

柄はあるけれど、着る人よりも前に出すぎない。いつものパンツや、使い慣れたバックパックとも自然に馴染む。Foggyという名前には、そんな輪郭のやわらかさも込めています。

この「ちょうどいい曖昧さ」を、生地としてつくることが難しいのだと思います。

淡くするだけでは、思っていた表情に届かないことがあります。濃い色の分量を変えれば、全体の印象も変わる。近くで見たときには魅力的でも、服になった大きさで見たときには、柄の強さが違って感じられるかもしれません。

思い描いた風合いを、織物にする。

色そのものと、その色がどれくらいの面積を占めるか。隣の色とどうつながるか。生地の表面が、どのように光を受けるか。そうした要素が重なって、一枚の布の表情になります。

織物は、長さ方向に並ぶ経糸と、幅方向に通る緯糸を交差させてつくられます。その糸の太さや間隔、交差の仕方によって、厚みや張り、しなやかさが変わります。

たとえば、同じ素材を使っていても、糸を細くするのか、太くするのか。目をどれくらい詰めるのか。仕上げでどのような風合いに整えるのかによって、出来上がる生地は違ってきます。

混率の表示は、生地を知るための大切な情報です。そこに、糸と織りの設計、仕上げの仕事が加わることで、僕たちが触れて感じる一枚になります。

思い描いた風合いを、織物にする。

Foggy Ombre Checkでも、糸の太さ、織りの密度、仕上がったときの目の詰まり具合を調整しました。淡い色合いと、わずかにかすれたような表情。その両方が、触れたときのやわらかさと無理なくつながるところを目指しています。

渡六毛織さんは、細いフィラメント糸から、表情に特徴のあるファンシーヤーンまで、幅広い糸を扱っています。そのものづくりを支えているのは、長年の経験を持つ職人たちと、素材に合わせて設備を調整する技術です。
渡六毛織公式・工場紹介

僕が生地に求めることには、「少しかすれた感じ」「しなやかだけれど、頼りなさはない」といった、感覚的な言葉が多くあります。そこから、どんな糸を使い、どのように織れば近づけるのかを考える。生地をつくる方々は、イメージと実物の間を、具体的な方法でつないでくださいます。

思い描いた風合いを、織物にする。

見た目と手触りは、どちらも大切です。好きな色の生地でも、服になったときに硬すぎれば、思っていた着心地から離れてしまう。やわらかさを求める一方で、日々着るものとしての扱いやすさも考えたい。その全体を見ながら、バランスを探していく仕事です。

素材には、メリノウールとナイロンを組み合わせています。

メリノウールに求めたのは、やわらかな肌触りと、穏やかな艶、暖かみのある風合い。そこへナイロンを組み合わせ、普段の着用に必要な強さも持たせたいと考えました。

山を歩くときにも、日常の中でも、服は身体の動きと一緒に働きます。腕を上げ、かがみ、荷物を背負う。その繰り返しの中で着続けられることと、袖を通すのが楽しみになること。その両方を、生地の段階から考えています。

思い描いた風合いを、織物にする。

もうひとつ大切にしたのが、服になったときの落ち感です。

生地を平らに広げた姿と、身体に沿って垂れた姿は違います。動けばひだが生まれ、色の重なりにも明るいところと暗いところができる。チェック柄の表情は、人が着て動くことで、さらに変わります。

Foggy Ombre Checkでは、そのときのしなやかさや、自然に落ち着くシルエットも意識しました。柄と素材と身体の動きが、ひとつの服として馴染んでほしいと思っています。

思い描いた風合いを、織物にする。

着始めた日から、ほんの少し古着のような気配があることも、この生地で大切にしたかったところです。

新品に袖を通すうれしさがありながら、どこか見慣れた感じもある。いつもの服と合わせたときに、自分のワードローブへすっと入ってくる。そんな馴染み方を目指しました。

そこから先は、着る人の時間が加わっていきます。

思い描いた風合いを、織物にする。

何度も袖を通すうちに、合わせる服が決まり、出番の多い季節ができる。旅に持っていったり、いつもの散歩に着ていったりするうちに、その一着に自分なりの記憶が重なっていく。僕は、そうやって身近になった服に惹かれます。

Foggy Ombre Checkも、大切に手入れをしながら、長く付き合っていただける生地になってほしいと思っています。

製品を手にするとき、最初に目に入るのは、形や色、ブランドの名前かもしれません。その色や手触りの中にも、つくった人の判断が重なっています。

どんな糸を選び、どう組み合わせ、どのような風合いに整えるか。僕たちが「好きだな」と感じる生地の表情には、そうした仕事が含まれています。

思い描いた風合いを、織物にする。

だから、この生地をご紹介するときには、渡六毛織さんのことも一緒にお伝えしたいと思いました。思い描いていた曖昧な色合いや、言葉にしきれない手触りを、実際に着られるものへとつないでくださった方々です。

岐阜・羽島で受け継がれてきた織物づくりの経験と、RIDGE MOUNTAIN GEARがつくりたかった一着。その出会いから生まれたFoggy Ombre Checkが、今度は着る人の毎日に馴染んでいく。

朝、いつものように選んだ服の中に、そんなものづくりの時間が続いていたら、うれしく思います。